これからのAI時代に必要な教育:「拡散的思考」を育てるということ

これからのAI時代に必要な教育:「拡散的思考」を育てるということ
これからのAI時代に必要な教育:「拡散的思考」を育てるということ

ChatGPT、Gemini、また画像生成AI、動画生成AI。

私たちのまわりには「一瞬で正解っぽい答え」を出してくれるAIが、どんどん増えてきました。

たとえば…

  • 英文の添削
  • プログラムのバグ修正
  • 料理レシピの提案

こういう 「過去の情報をもとに、正しそうな答えを返す」 仕事は、AIが本当に得意です。

でも一方で、

  • 誰もやっていないサービスの企画
  • 前例がないけれど、ユーザーが感動する改善案
  • 「なんかこのやり方、おかしくない?」という違和感から始まる改革

こういう領域は、まだまだ 人間のほうが圧倒的に得意 なままです。
ここで鍵になるのが、この記事のテーマでもある 「拡散的思考」 です。

目次

1. AIが得意なのは「収束」、人が強いのは「拡散」

AIは、過去のデータを大量に学習していて、

  • パターンを見つける
  • 矛盾の少ない答えを出す
  • 条件に合う「最適解」を計算する

といった 「収束的思考」 が非常に得意です。
受験問題を解いたり、仕様がはっきり決まっているプログラムを書くのは、まさにこの領域です。

一方で、人間が強いのは、

・答えがひとつに決まっていない
・そもそも「問題文」がまだ言語化されていない
・正解よりも「心が動くかどうか」が大事

といった場面です。

たとえば、

  • 「この町を、もっとワクワクする場所にするには?」
  • 「中学生が思わずやってみたくなるAI授業って、どんな形?」
  • 「落ち込んでいる人の心が、ふっと軽くなる“ひとこと”って何だろう?」

こういう問いは、過去の正解をなぞるだけでは足りない ですよね。
まだ誰も形にしていない「何か」を、試行錯誤しながら探す必要があります。

ここで必要になるのが、答えを1つに絞る前に、あえて「たくさん広げてみる力」 = 拡散的思考 です。

2. 「拡散的思考」って、具体的にどんな力?

拡散的思考は、よくこんなふうに説明されます。

ひとつのテーマから、できるだけ多くのアイデア・視点・可能性を思いつく力

もう少し噛み砕くと、こんなイメージです。

・「A or B?」で終わらず、「C〜Zまで作ってみる」
・他の人が思いつかないような角度で物事を見る
・失敗を前提に、まずは試してみる

たとえば、「学校の宿題を、もっと楽しくしたい」というテーマがあったとき、

  • ゲーム化する
  • 宿題を「先生にインタビューする日」に変える
  • 宿題を「親に教えるミッション」にして、親子で学ぶ日にする

…といった形で、とにかく「数」と「方向性」を広げてみる のが拡散的思考です。

ここで大事なのは、最初から

「それは現実的じゃない」
「予算的に無理」
「前例がないからやめよう」

と切り捨てないこと。
「一旦、広げきってから整理する」のが拡散的思考の基本姿勢 です。

3. なぜAI時代に「拡散的思考」が必須なのか

AIが広がるほど、人間に求められる役割は、少しずつ変わっていきます。

① 正解を出す仕事 → AIと分担できる

テストの解答、文法チェック、数値シミュレーションなどは、AIに任せれば、かなりの精度で返ってきます。

つまり、

「既に存在する正解にたどり着く力」だけで戦うのは、どんどん厳しくなる

ということでもあります。

② まだ言語化されていない「モヤモヤ」を形にする役割

一方で、

・社会の中の違和感
・誰も言語化していないけれど、多くの人が感じている生き辛さ
・「こうだったらいいのに」という小さな願い

こういうモヤモヤを感じて、「問いに変え、企画に変え、行動に変えていくこと」は、まだ人間の専売特許です。

AIは「与えられた目的」に対して最適化するのは得意ですが、「そもそも、どんな目的が大事?」を選ぶのは人間の仕事 です。

③ 人を動かすのは、ロジックではなく「ストーリー」

AIがつくる資料やプレゼンは、ロジカルで、抜け漏れが少ないかもしれません。
でも、人が心から動くのは、

・その人自身の体験
・本気で悩んだ人が、たどり着いた言葉
・弱さも含めてさらけ出したストーリー

だったりします。

未知の企画や、前例のない改善が人を感動させるのは、「そこに、その人だけの物語があるから」です。

拡散的思考は、

「正しいかどうか」より先に、「おもしろいか」「心が動くか」を一度大事にする思考法

だからこそ、AIでは埋めきれない「ストーリーの余白」をつくるために、欠かせない力になっていきます。

4. 教育で「拡散的思考」を育てるには?

ここからは、教育の場や、家庭・職場でできる実践アイデアを少し。

① 正解を一つに絞る前に、「10案出してから選ぶ」

テスト勉強や受験では「1つの正解」を素早く選ぶ訓練が多くなりがちです。
そのバランスをとるために、あえてこういうルールを入れてみるのも有効です。

・新しい企画を考えるときは、必ず10個案を出してから選ぶ
・サービス改善案を出すとき、「現実的な案」だけでなく、「ぶっ飛び案」も必ず1つ混ぜる
・コードの書き方を学ぶとき、「この処理を3パターン書いてみよう」と視点を増やしてみる

「1発で正解を当てる」より、「たくさんの可能性から、良いものを選べる人」を育てる意識が大事です。

② 問いそのものをつくる練習をする

今までは、

出される問いに、上手に答える力

が重視されてきました。
しかし、これからは、

「問いそのものをつくる力」

が、ますます重要になっていきます。

たとえば授業やワークショップで、

  • 「AIに聞いてみたいことを、10個書いてみよう」
  • 「このニュースから、『問い』を3つ抜き出してみよう」
  • 「この問題文、そもそもどこが前提になってると思う?」

といった練習を入れていくと、「出題者の外側に出る感覚」 が育っていきます。

③ AIを「答えをくれる先生」ではなく、「一緒に広げる相棒」にする

拡散的思考を育てるとき、AIは「敵」ではなく、むしろ強力な相棒です。

・自分で5個アイデアを出したあとに、「同じテーマでAIにも10個出してもらう」
・自分の案とAIの案を混ぜて、新しい案を合成してみる
・AIに「このアイデアを、子ども向け/シニア向け/海外向けにアレンジして」と頼んで、視点を増やす

こうやって、

① 自分で広げる
② AIに広げてもらう
③ それを“自分の感覚”で選び直す

というサイクルを回していくと、
人間側の拡散的思考も、AIの活用力も、一緒に伸びていきます。

5. 大人にも「拡散的思考のリハビリ」が必要

拡散的思考は、本来だれもが子どもの頃にもっていた力でもあります。

  • 段ボールひとつで、何時間も遊べる
  • 石ころ1つに名前をつけて、物語を作れる
  • 「もしも〜だったら…」の妄想で、ずっと笑っていられる

成長するにつれて、

  • 正解を間違えないこと
  • 失敗しないこと
  • 変な人だと思われないこと

が優先されていくうちに、心の中の拡散モードが、だんだん封印されていきます。

でも、AI時代にこそ必要なのは、「もう一度、拡散モードを解禁する勇気」 です。

仕事の場でも、

・「一旦、現実度は置いておこう」と宣言してからブレストする
・「ツッコミ禁止タイム」を5分間つくって、とにかく数を出す
・若手、子ども、まったく別分野の人のアイデアを混ぜてみる

そんな小さな解禁から始めてみませんか?

6. まとめ:AIが正解をくれる時代だからこそ、「広げる力」を一緒に育てよう

AIは、過去の情報や膨大なデータに基づいて、正確で、効率のいい答え を出すことができます。

でも、

・前例のない企画
・人の心を震わせるストーリー
・「なんか良いよね」と感じられる空気や雰囲気

こういったものは、これからもしばらく、人間にしかつくれません。

だからこそ、これからの教育で大切なのは、

正解を早く出す訓練だけではなく、「まだ形になっていない可能性を、広げて・遊んで・選べる人」を育てること。

AIの時代は、「AIが成長する時代」ではなく、「AIと一緒に、人間が成長する時代」 です。

その中心にあるのが、この記事で扱った 「拡散的思考」 という力。

子どもたちにも、大人たちにも、AIと肩を並べて、「まだ誰も見たことのない未来」を一緒に考えてほしいなと思います。

noteで日々の情報発信をしていますので、よろしければご覧ください。

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